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算出方法

高周波トランス(フェライトコア)

(1)式、(2)式を基本として計算する。

ΔB=(Vin・Ton)/(Np・S)・・・(1)
Vout=(Ns/Np)・Vin・Duty・・・(2)

ここで、
ΔB:磁束変化 Vin:入力電圧(DC) Vout:出力電圧(DC)
Duty:デューティ比 Ton:入力電圧の印加時間(1/f×Dutyと同じ)
Np:1次巻数 Ns:2次巻数
S:コア断面積

 従って、磁束変化ΔB、入力電圧Vin、印加時間(周波数とデューティ比)Tonを与えれば、コア断面積Sと1次巻数Npの積が得られる((3)式)。

Np・S=(Vin・Ton)/ΔB・・・(3)

 コア断面積Sが大きければ巻数Npを減らすことが出来、逆に巻数Npを多くすればコア断面積Sを小さくすることが出来る。現実的には、変換電力(電流)から線径を求め、コア断面積と巻線断面積の両立するコアを選ぶ事になる。


商用周波数トランス(電磁鋼板コア)

(4)式、(5)式を基本として計算する。

Np=Vin/(4.44・ΔB・S・Freq)・・・(4)
Ns=Np・Vout/Vin・・・(5)

ここで、
ΔB:磁束変化 S:コア断面積(占積率を含む) Freq:入力周波数 Vin:入力電圧(実効値) Vout:出力電圧(実効値) Np:1次巻数 Ns:2次巻数

2次巻数は(5)式の通り電圧比のみで算出していて、巻線抵抗×出力電流による電圧降下の補正は含まれていないので注意。


パラメータ入力

回路方式
回路方式を選択・指定する。
入力電圧(最大) Vin(max)[V]
入力される最大電圧(直流)を指定する。回路方式で銅鉄トランスを選択した場合は、交流実効値を指定する。※1
入力電圧(最小) Vin(min)[V]
入力される最小電圧(直流)を指定する。回路方式で銅鉄トランスを選択した場合は、交流実効値を指定する。※2
入力電圧(定格) Vin(std)[V]
入力される定格電圧(直流)を指定する。入力されなかった場合、最大・最小電圧の中央値となる(省略可)。回路方式で銅鉄トランスを選択した場合は、交流実効値を指定する。
出力電圧 Vout[V]
出力したい電圧を入力する。
順方向降下電圧 Vf[V]
整流ダイオード等で見込まれる降下電圧を指定する。指定しなかった場合は0Vとして処理する。
出力電力 Pout[W]
負荷に供給したい電力を指定する。
スイッチング周波数 f[kHz]
スイッチング周波数を指定する。入力単位はkHzなので、例えば50kHzの場合は[ 50]と入力する。※3
ここで入力した周波数と、トランス両端電圧の関係については計算出力で表示される波形を確認すること。
銅鉄トランスを選択した場合は、入力電圧の周波数を入力する。例えば50Hzの場合は[0.05]と入力する。
デューティ D[%]
スイッチング素子の最大デューティ比を指定する。1石回路の場合は10〜95%に、それ以外の回路の場合は10%〜49%に制限される。※4
変換効率 η[%]
トランスの変換効率を指定する。50%未満を指定した場合は50%に、100%以上を指定した場合は99.9%に修正される。
最大磁束密度 Bmax[T]
最悪条件下での磁束密度を指定する。この指定値を使った処理は未実装なので省略可。※5
磁束変化 ΔB[T]
磁束変化を指定する。通常は飽和磁束密度から残留磁束密度を差し引いた値から、余裕を見て0.6〜0.8倍した値とする。
回路方式で2石ハーフブリッジ、4石フルブリッジ、2石プッシュプルを選択した場合でも、磁束変化を倍にして入力する必要は無い。

計算出力

基本回路

指定された回路方式に従って基本回路と、各パラメータ・計算結果を表示する。回路図中、左側から

入力電力・入力電圧
入力電力は、指定された出力電力/電圧から負荷電流を求め、負荷電力にVf分の損失電力を合計して、さらに指定された変換効率から逆算している。
スイッチング周波数・デューティ比
トランス巻数
[巻数比を指定]すると、その値がここにも表示される。
トランス出力最大電圧
トランス出力の最大電圧を表示する。入力電圧の最大値にトランス巻数比を乗じた値。
出力電圧
指定された出力電圧を表示する。
出力電力・電流
指定された出力電力を表示する。電流は指定された出力電力・電圧から逆算した値。

波形

指定された回路方式によるトランス両端波形概略と各値を示す。設計したい条件と一致しているか確認すること。

トランス両端電圧
トランスに印加される電圧を示す。2石ハーフブリッジの場合は入力電圧の半分になる。
スイッチング周波数/等価on duty ratio
トランスに印加される電圧のスイッチング周波数と、オンデューティ比を示す。多石の場合、それぞれのスイッチング素子を見た場合のデューティ比は50%でも、トランスから見たデューティ比は100%になる事に注意。

その他

最大巻数比
二次側巻数を1としたときの一次側巻数比。この巻数比より大きいと、入力電圧(最小)時にOnDutyを最大にしても出力電圧が維持出来ない。
巻数(例)Np/巻数(例)Ns
巻数比を適当倍した値を表示。ΔB等を考慮した値では無い。
N1×S(Ae)
電力変換に必要な一次側巻数とコア断面積の積を表示する。(3)式を参照のこと。巻数を下げればコア断面積が必要になり、逆に巻数を大きくすればコア断面積はさほど要らない(ただ巻線断面が大きくなる)ということを示している。巻数を少なく、コア断面積も小さくすれば、磁束密度が上がる。ただそれだけのことである。

巻数設定

1次側巻数Np/2次側巻数Ns
1,2次の巻数を入力し[巻数を指定]をクリックする。[巻数を指定]をクリックすると必須Acpmin(Ae)(必要なコア断面積)が即座に更新される(何度やり直してもOK)。
電流密度Id
巻線の電流密度を入力し[電流密度変更]をクリックする。指定された電流密度から必要な線径を逆算し表示する。巻線断面積は単に、巻数×巻線断面の計算のみ。
コア選択
プルダウンメニューからコアのメーカー、形状を選択し[コア指定]をクリックする。
回路方式で銅鉄トランスを選択した場合は、[銅鉄コア選択]をクリックする。別ウィンドウが表示されるので、その中でコア形状を選択、積厚を指定し、[結果送信]をクリックすると、計算結果が元のウィンドウの断面積入力に反映される。直接、断面積を入力する事も出来るが、その場合はコア体積が算出出来ないので、そこから導かれる質量・鉄損は算出されない。

コアデータ表示

1石、2石Harfブリッジ、4石Fullブリッジ、2石PP選択時
選択されたフェライトコアのデータを表示する。必須Acpmin(Ae)よりも最小中脚断面積Acpminのほうが大きければ良い。足りない場合は、コア選択で大きめのコアを指定し直す(何度やり直してもOK)。逆に余裕が大きい場合は小さめのコアを指定し直す。
(データシートに記載の無い数値は[---.-]と表示される。JFEの中脚断面積等)
銅鉄トランス選択時
選択された鉄芯形状、指定された積厚とシート厚から算出したシート枚数等を表示する。断面積のみを直接入力して計算した場合は、指定コアがEI-28、積厚が10mmと表示されるが、巻数計算には影響しない。

検算表示

スイッチング周波数fsw
入力されたスイッチング周波数を表示する。
リセット電圧Vr
励磁電流による蓄積エネルギーが電圧として放出される、その電圧値。
1次側インダクタンスLp
1次側巻数と選択されたコアのAl-valueから算出した値。ちなみに励磁電流は、入力電圧/1次側インダクタンス×t(時間)で増加する。
最大動作磁束密度
入力電圧が最大、OnDutyが最大の条件下の磁束密度を表示する。スイッチング電源では、入力電圧が高ければPWM制御でOnDutyは小さくなるよう制御されるが、電源投入直後や入力電圧の急変等の際にも飽和しないかどうかの目安となる。
定格動作磁束密度
入力電圧が定格、OnDutyが定格負荷電圧の条件下の磁束密度を表示する。
定格動作時デューティー
入力された1-2次巻数に於いて、入力電圧が定格のとき、定格負荷電圧を出力するデューティー比を表示する。
定格動作時励磁電流
二次側が無負荷状態でも流れる電流。(定格入力電圧×Ton) / 1次側インダクタンス で算出した値を表示する。

2次側巻数補正

 2次側の巻線抵抗と負荷電流によって降下する電圧分を補正するための巻数を計算する。巻線抵抗の算出には巻線の長さが必要になるため、平均巻線長を入力する。平均巻線長を入力し[降下電圧計算]をクリックすると、降下電圧と、それを補正する巻数が表示されるので、巻数調整で得られた2次側巻数Nsに、この巻数を加算した値が最終的な2次側巻数になる。


ロス計算

 コアロス(鉄損)と、銅損を算出・表示する。銅損の算出は巻線長が必要となるため、2次側巻数補正の項で平均巻線長が入力されている必要が有る。

1石、2石Harfブリッジ、4石Fullブリッジ、2石PP選択時
 選択したコア材のデータシートを用い、動作時の周波数・磁束密度から単位体積辺りのコアロス(kW/m3)を読み取って入力する。データシートに記載の実効体積Veを用いて算出する。
銅鉄トランス選択時
 選択したコア材のデータシートを用い、動作時の周波数・磁束密度から単位質量辺りのコアロス(W/kg)を読み取って入力する。選択された鉄芯形状と指定された積厚から算出した体積を用いて算出する。従って断面積のみを直接入力した場合は算出出来ない。

参考文献

実用電源回路設計ハンドブック ハードウェア・デザイン・シリーズ
改訂 スイッチング・レギュレータ設計ノウハウ―すべての疑問に応えた電源設計 現場技術者実戦シリーズ
高効率・高信頼スイッチング電源設計の勘どころ

更新履歴

2019/09/07
銅鉄モード時、コア指定後に再びコア選択windowを表示させたとき、元のコアが選択されなくなっていた不具合を修正
2019/09/06
線径を個別に直接指定出来るよう変更
銅鉄コアのデータを少しだけ拡充
2017/03/17
線径を0.05mmステップではなく、実在の線径(1種)を表示するよう算出方法を変更
巻数/層の計算に、標準仕上がり外径(1種)の近似値を用いるよう変更(近似式 1.0259812x線径+0.03450104)
2017/03/14
銅鉄のコア形状・積厚を別Windowで選択・指定出来るよう拡張(コア占積率は95%固定)
鉄芯質量、銅質量を算出するよう処理拡張
2017/03/10
入力電圧(最大、最小、定格)の3つのうち、何れかが入力されていない時の補完に不備があったのを修正
2017/03/09
銅鉄(商用周波数)トランスへ対応出来るよう処理拡張(コア断面積は占積率込みで手入力別Windowで指定出来るようになりました
巻線断面積の計算が、文字通り巻線のみ(πr2)になっていたのを、線径の15%増の矩形で計算するよう変更
2次側巻線の電圧降下の補正を計算するよう処理拡張
平均巻線長を入力すると、銅損・銅質量を計算するように処理拡張
2016/6/24
パラメータ入力・計算後、先にコアを指定し、Aeから巻数を算出出来るように処理拡張
2016/6/22
「コア選択」にメーカー選択を新設
[コア指定]ボタンで計算を行った際に、表示がパラメータ入力部に戻ってしまうのを、計算結果に来るようにロケーションハッシュを修正
2016/6/18
巻数、電流密度指定に[↑][↓]ボタンを新設
[電流密度変更]処理の関数を変更(引数を渡す方法から、formから拾ってくる方法に変更)
2016/6/17
計算がループしてしまい、phpスレッドがタイムアウトになるのを防止するため、最大onduty、スイッチング周波数、変換効率に入力範囲の制限処理を追加
巻数を指定せずに[巻数を指定]ボタンを押した時、自動的に巻数(例)が入力されるよう変更
巻数に小数点を含む値を受け付けていたのを、小数点以下切り捨てに変更
メモ用のテキストエリアを新設
画面レイアウトを変更(フライバック設計支援に合わせた)
2013/2/4
コアデータのAl-value表示の単位がuHになっていたのをnHに訂正
2011/08/22
励磁電流算出を追加 算出は単純にVin/Lp*ton。ヘルプを少しだけ追記
2011/06/17
2石PPを有効、2石PP回路図も追加、定格入力電圧から定格時の動作磁束算出を追加、コアロス計算を有効
2011/06/13
線径を0.05mmステップ換算するように変更、回路図中の二次側ピーク電圧(整流ダイオード部分)の算出がおかしかったのを修正、コア・ボビンデータ拡充、他設計例とデータ突き合わせ中
2011/06/10
回路図修正(2石half,4石full),トランス両端電圧波形の表示を追加,パラメータクリアをJavaScript化
2011/06/09
線径算出・断面積算出を追加、2石half,4石fullブリッジの計算条件分岐を有効に。
ただし線径算出に必要な1次/2次巻線の電流値は、単に電力/電圧で求めているので参考程度とする事!(今のところ 後に改良するかも)
2011/06/08
巻数調整&巻数比チェック機能追加,コア指定後の計算の準備
2011/06/07
回路図追加,回路選択機能追加(の準備),2石half,4石full,2石PPの計算条件をお勉強中。
2011/06/06
フォーム処理お復習い中
2011/06/03
書き始め

問題点・追加機能など


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